電気・電子機器は、EMC試験を行い、国や地域が定める所定規格に適合していることを証明しなければ市場※1に出すことができません。
規格適合していない場合、電磁波を発生(EMI:エミッション)して他の電子機器の誤作動を招いたり、逆に他の機器から発生する電磁波を受け(EMS:イミュニティ)機能障害をおこしたりする可能性があるからです。
国や地域における規格の違いは国際貿易において大きな障壁となります。そのためEMC試験には想定できうる、さまざまなトラブルを回避するために定められた取り決め(=標準)を文章化した「規格」が設けられています。
※1.日本では自主規制の形をとっているが、「米国:法的に厳しく規制」「欧州:規格に適合しない機器の輸入・販売はできない」など厳格に規制している国や地域が多い。
1.EMC規格の分類
まず、EMC規格は主に以下のように分類されます。
1.1 国際規格
国際的な審議委員が策定した世界的に通用する規格
例:IEC規格、CISPR規格など
1.2 地域企画
特定の地域(国々)で共通して利用される規格
例:EN規格(欧州)、AS/NZS(オセアニア)、ASEAN規格(東南アジア)など
1.3 国家規格
国ごとに策定された規格
例:BS規格(英国)、ANCI規格(米国)、FCC(米国・カナダ)、JIS(日本)、KN(韓国)、GOST(ロシア)、DIN(ドイツ)など
※日本の規格については後ほど詳しくご説明します。
1.4 地区規格
特定の業界や企業内で使われる規格
業界規格や企業規格とも呼ばれます。
2.代表的なEMC規格「国際規格」とは
国ごとの規格の違いは国際貿易において大きな障壁となります。場合によっては製品の安全性を脅かすことにもなりかねません。
そこで、1908年に「国際貿易の活発化や利便性を高めること」を目的に、電気工学、電子工学、およびそれらに関連した技術を扱う国際的な標準化機関「IEC(国際電気標準会議)」が発足しました。
IECには現在164ヵ国(正会員は84ヵ国)が参加しており、世界的に通用する規格=国際規格を策定しています。
各国の規格は、1の国際規格に準ずる形で策定されているため、この国際規格についてしっかり理解しておく必要があります。
国際規格は大きく分けて、
- IECの中の専門委員会TC7※2が策定する「IEC規格」
- IECの中の特別委員会CISPR(国際無線障害特別委員会)※3が策定する「CISPR規格」
に分かれます。CISPR規格は無線障害に関する国際的な規格であり、「エミッション規格」がメインとなります。
※2.EMC(電磁両立性)を検討するために1973年に設立されたIECの中に作られた専門委員会。
※3.CISPR(国際無線障害特別委員会)は、無線障害の原因となる各種機器からの不要電波(妨害波)に関し、その許容値と測定法を国際的に合意することによって国際貿易を促進することを目的として1934年に設立されたIECの特別委員会。
主なIEC規格
<IEC61000シリーズ>
IEC61000-1では、EMCに関する一般的な事項が規定されています。
- IEC61000-1-1 TR
- 基本的な定義と用語の適用と解釈
- IEC61000-1-2
- 電磁現象に関して電気電子機器の機能安全を達成するための方法論
- IEC61000-1-3 TR
- 民生機器と民生装置における高高度EMP(HEMP)の影響
- IEC61000-1-4 TR
- 2kHzまでの周波数における機器からの電源周波数伝導高調波電流エミッション制限の歴史的根拠
- IEC61000-1-5 TR
- 民生装置における大電力電磁(HEMP)の影響
- IEC61000-1-6 TR
- 測定の不確かさの評価のための指針
- IEC61000-1-7 TR
- 非正弦波状態の単相系統の力率
- IEC61000-1-8 TR
- 公共電源系統における高調波電流エミッションと電圧の位相角-将来予想
IEC61000-2では、限度値を設定するための環境条件について規定されています。
- IEC61000-2-1 TR
- 環境の解説-公共配電系統における低周波伝導妨害と電力線搬送のための電磁環境
- IEC61000-2-2
- 公共低電圧配電系統における低周波伝導妨害と電力線搬送のための両立性レベル
- IEC61000-2-3 TR
- 環境の解説-放射現象および電力周波数に無関係の伝導現象
- IEC61000-2-4
- 工業プラントにおける低周波伝導妨害のための両立性レベル
- IEC61000-2-5 TR
- 電磁環境の解説および分類
- IEC61000-2-6 TR
- 工業プラントの内の電源における低周波伝導妨害に関するエミッションレベルの評価
- IEC61000-2-7 TR
- さまざまな環境における低周波磁界
- IEC61000-2-8 TR
- 公共配電系統における電圧ディップと短時間停電、およびその統計的測定結果
- IEC61000-2-9
- HEMP環境の解説-放射妨害
- IEC61000-2-10
- HEMP環境の解説-伝導妨害
- IEC61000-2-11
- HEMP環境の分類
- IEC61000-2-12
- 公共中圧送電系統における低周波伝導妨害と電力線搬送の両立性レベル
- IEC61000-2-13
- 大電力電磁(HEMP)環境放射および伝導
- IEC61000-2-14 TR
- 公共配電系統における過電圧
IEC61000-3シリーズでは主に低周波エミッションの限度値が規定されています。
- IEC61000-3-2
- 高調波電流発生限度値(1相あたりの入力電流が16A以下の機器)
- IEC61000-3-3
- 定格電流相あたり16A以下で、条件付き接続を必要としない機器のための、公共低圧配電系統にお ける電圧変化、電圧変動およびフリッカの制限
- IEC61000-3-4 TS
- 定格電流16Aを超える機器のための低圧配電系統における高調波電流エミッションの制限
- IEC61000-3-5 TS
- 定格電流75Aを超える機器のための低圧配電系統における電圧変動とフリッカの制限
- IEC61000-3-6 TR
- 中圧、高圧および特別高圧電力系統にひずみ発生設備を接続するためのエミッション限度値の評価
- IEC61000-3-7 TR
- 中圧、高圧および特別高圧電力系統に変動設備を接続するためのエミッション限度値の評価
- IEC61000-3-8
- 低圧電力設備における電力線搬送-エミッションレベル、周波数帯域および電磁妨害レベル
- IEC61000-3-11
- 公共低圧配電系統における電圧変化、電圧変動およびフリッカの制限定格電流75A以下で条件付き接続を必要とする機器
- IEC61000-3-12
- 公共低圧系統に接続する入力電流が相あたり16Aを超え75A以下の機器が発生する高調波電流の限度值
- IEC61000-3-13 TR
- 中圧・高圧・特別高圧電力系統に不平衡設備を接続するためのエミッション限度値の評価
- IEC61000-3-14 TR
- 低圧電力系統に妨害発生設備を接続するための高調波、次数間高調波、電圧変動および不平衡の エミッション限度値の評価
- IEC61000-3-15 TR
- 低圧系統の分散発電システムのための低周波電磁イミュニティおよびエミッション要求事項の評価
IEC61000-4では、主に試験および測定技術について規定されています。
- IEC61000-4-1 TR
- IEC61000-4シリーズの概観
- IEC61000-4-2
- 静電気放電イミュニティ試験
- IEC61000-4-3
- 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験
- IEC61000-4-4
- 電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験
- IEC61000-4-5
- サージイミュニティ試験
- IEC61000-4-6
- 無線周波数電磁界によって誘導する伝導妨害に対するイミュニティ
- IEC61000-4-7
- 電力供給システムおよびコレに接続する機器のための高調波および次数間高調波の測定方法および計装に関する指針
- IEC61000-4-8
- 電源周波数磁界イミュニティ試験
- IEC61000-4-9
- パルス磁界イミュニティ試験
- IEC61000-4-10
- 減衰振動磁界イミュニティ試験
- IEC61000-4-11
- 電圧ディップ、短時間停電および電圧変動に対するイミュニティ試験
- IEC61000-4-12
- 振動波イミュニティ試験
- IEC61000-4-13
- 交流電源ポートの電力線搬送を含む、高調波および次数間高調波低周波イミュニティ試験
- IEC61000-4-14
- 1相あたりの入力電流が16A以下の機器のための電圧変動イミュニティ試験
- IEC61000-4-15
- フリッカメータ – 機能と設計仕様
- IEC61000-4-16
- 直流から150kHzまでの伝導コモンモード妨害に対するイミュニティ試験
- IEC61000-4-17
- 直流入力電源端子におけるリプルに対するイミュニティ試験
- IEC61000-4-18
- 減衰振動波イミュニティ試験
- IEC61000-4-19
- 交流電源ポートの2kHzから150kHzまでの伝導ディファレンシャルモード妨害および電力線搬送に対するイミュニティ試験
- IEC61000-4-20
- TEM導波管のエミッションおよびイミュニティ試験
- IEC61000-4-21
- 反射箱試験方法
- IEC61000-4-22
- 6面電波暗室での放射エミッションおよびイミュニティ測定
- IEC61000-4-23
- HEMPおよびその他の放射妨害のための保護器のための試験方法
- IEC61000-4-24
- HEMP伝導妨害のための保護器のための試験方法
- IEC61000-4-25
- 機器と装置のためのHEMPイミュニティ試験方法とのためのHEMPイミュニティ試験方法
- IEC61000-4-27
- 1相あたりの入力電流が16A以下の機器のための不平衡イミュニティ試験
- IEC61000-4-28
- 1相あたりの入力電流が16A以下の機器のための電源周波数変動イミュニティ試験
- IEC61000-4-29
- 直流電源入力ポートにおける電圧ディップ、短時間停電および電圧変動イミュニティ試験
- IEC61000-4-30
- 電力品質測定方法
- IEC61000-4-31
- 交流主電源ポートの広帯域妨害イミュニティ試験
- IEC61000-4-32
- 高高度電磁パルス(HEMP)シミュレータ概説
- IEC61000-4-33
- 大電力過渡パラメータ測定方法
- IEC61000-4-34
- 1相あたりの入力電流が16Aを超える電気機器の電圧ディップ、短時間停電および電圧変動に対するイミュニティ試験
- IEC61000-4-35 TR
- HEMPシミュレータ概説
- IEC61000-4-36
- 機器および装置の意図的電磁妨害(IEMI)イミュニティ試験方法
- IEC61000-4-37 TR
- 高調波エミッション適合性試験装置の校正および検証手順
- IEC61000-4-38 TR
- 電圧変動およびフリッカ適合性試験装置の試験、検証および校正手順
- IEC61000-4-39
- 近接電磁界イミュニティ試験
IEC61000-5シリーズでは、機器の設置方法や妨害波の影響を軽減するための指針が示されています。
- IEC61000-5-1 TR
- 一般的考察
- IEC61000-5-2 TR
- 接地と配線
- IEC61000-5-3 TR
- 高高度電磁パルス(HEMP)保護概念
- IEC61000-5-4 TR
- HEMPのイミュニティ - HEMP放射妨害に対する保護器のための仕様
- IEC61000-5-5
- HEMP伝導妨害のための保護器の仕様
- IEC61000-5-6 TR
- 外部からの電磁影響の軽減
- IEC61000-5-7
- 電磁妨害に対する筐体による保護の程度(EMコード)
- IEC61000-5-8 TS
- 社会基盤のためのHEMP保護方法
- IEC61000-5-9 TS
- HEMPと大電力電磁(HPEM)のシステムレベル感受性評価
- IEC61000-5-10 TS
- HEMPと意図的電磁妨害(IEMI)に対する施設の保護
IEC61000-6シリーズは共通規格です。共通規格とは製品規格や製品群規格に当てはまらない機器に適用する規格のことを指します。
- IEC61000-6-1
- 住宅、商業および軽工業環境におけるイミュニティ
- IEC61000-6-2
- 工業環境におけるイミュニティ
- IEC61000-6-3
- 住宅、商業および軽工業環境におけるエミッション規格
- IEC61000-6-4
- 工業環境におけるエミッション規格
- IEC61000-6-5
- 発電所、変電所環境のためのイミュニティ
- IEC61000-6-6
- 屋内機器のためのHEMPイミュニティ
- IEC61000-6-7
- 工業環境における安全関連機能(機能安全)の遂行を意図した装置に対するイミュニティ要求事項
主なCISPR規格
<CISPR16シリーズ>
「CISPR16シリーズ」は他の規格と種類が異なります。 基本規格と呼ばれるもので、EMC試験で使用する機器や試験方法などを規定しています。
- CISPR16
- 無線妨害およびイミュニティの測定装置ならびに測定方法のための仕様
- CISPR16-1-1
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-測定装置
- CISPR16-1-2
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-補助機器-伝導妨害
- CISPR16-1-3
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-補助機器-妨害電力
- CISPR16-1-4
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-補助機器-放射妨害測定用アンテナおよび試験サイト
- CISPR16-1-5
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-5MHz~18GHzのアンテナ校正サイトおよび基準試験サイ ト
- CISPR16-1-6
- 無線妨害とイミュニティの測定装置-EMCアンテナの校正
- CISPR16-2-1
- 妨害およびイミュニティ測定方法-伝導妨害の測定
- CISPR16-2-2
- 妨害およびイミュニティ測定方法-妨害電力の測定
- CISPR16-2-3
- 妨害およびイミュニティ測定方法-放射妨害の測定
- CISPR16-2-4
- 妨害およびイミュニティ測定方法-イミュニティの測定
- CISPR16-2-5 TR
- 物理的に大型の機器により発生する妨害エミッションの現地測定
- CISPR16-3 TR
- CISPR技術報告書
- CISPR16-4-1 TR
- 不確かさ、統計および限度値モデリング-標準EMC試験の不確かさ
- CISPR16-4-2
- 不確かさ、統計および限度値モデリング-測定装置の不確かさ
- CISPR16-4-3 TR
- 不確かさ、統計および限度値モデリング-大量生産製品のEMC適合性の決定における統計的考察
- CISPR16-4-4 TR
- 不確かさ、統計および限度値モデリング-無線サービスのための苦情の集計および限度値計算の ための1つのモデル
- CISPR16-4-5 TR
- 不確かさ、統計および限度値モデリング代替試験方法を使用するための条件
<CISPR16以外>
製品群規格と呼ばれるものが大半を占めます。
- CISPR11
- 工業用、科学用および医療用機器(ISM機器)-無線周波妨害特性-限度値と測定方法
- CISPR12
- 車両、ボートおよび内燃機関 - 無線妨害特性-非搭載受信機の保護のための限度値と測定方法
- CISPR14-1
- 家庭用機器、電動工具および類似の器具のための要求事項-第一部: エミッション
- CISPR14-2
- 家庭用機器、電動工具および類似の器具のための要求事項-第二部: イミュニティー製品群規格
- CISPR15
- 電気照明と類似機器の無線妨害特性の限度値と測定方法
- CISPR17
- 受動EMCフィルタの抑圧特性の測定方法
- CISPR18-1 TR
- 架空送電線と高電圧機器の無線妨害特性-第一部:現象の説明
- CISPR18-2 TR
- 架空送電線と高電圧機器の無線妨害特性-第二部: 測定方法と限度値を決定するための手順
- CISPR18-3 TR
- 架空送電線と高電圧機器の無線妨害特性-第三部: 無線雑音の発生を最小化するための実施規定
- CISPR20
- ラジオ、テレビ放送受信機および関連機器-イミュニティ特性限度値と測定方法
- CISPR24
- 情報技術機器-イミュニティ特性限度値と測定方法
- CISPR25
- 車両、ボートおよび内燃機関 -無線妨害特性-搭載受信機の保護のための限度値と測定方法
- CISPR28 TR
- 工業用、科学用および医療用機器(ISM機器)-ITUに指定された帯域内のエミッションレベルの ための指針
- CISPR29 TR
- テレビ方法受信機および関連機器-イミュニティ特性-客観的画像評価方法
- CISPR30-1 TR
- 電磁エミッションの試験方法-第一部:片口金蛍光ランプおよび直管蛍光ランプの電子安定器
- CISPR30-2 TR
- 電磁エミッションの試験方法-第二部: 蛍光ランプを除く放電ランプの電子安定器
- CISPR31 TR
- 無線サービスの特性のデータベース
- CISPR32
- マルチメディア機器の電磁両立性-エミッション要求事項
- CISPR35
- マルチメディア機器の電磁両立性・イミュニティ要求事項
3.EMC規格の種類
自社の製品と関係する規格があるかどうか調べるためには、規格の種類を知る必要があります。優先順位は1が最も高く、下に行くほど低くなります。
3-1.製品規格
その製品専用の規格。その製品特有の細かい規定が盛り込まれています。
3-2.製品群規格
何らかの関連を持つ製品群に対して適用する規格。以下に例を紹介します。
〈例〉
エミッション規格
- CISPR11:ISM装置
- CISPR14-1:家庭用電気機器、電動工具および類似機器
- CISPR15:電気照明および類似機器
- CISPR32:マルチメディア機器
イミュニティ規格
- CISPR14-2:家庭用電気機器、電動工具および類似機器
- IEC61547:一般照明目的の機器
- CISPR35:マルチメディア機器
3-3.共通規格(一般規格)
使用環境で分けられた規格。さまざまな製品に横断的に適用されます。以下に例を紹介します。
〈例〉
エミッション規格
- IEC61000-6-3:住宅、商業および軽工業環境におけるエミッション規格
- IEC61000-6-4:工業環境におけるエミッション規格
イミュニティ規格
- IEC61000-6-1:住宅、商業および軽工業環境におけるイミュニティ規格
- IEC61000-6-2:工業環境におけるイミュニティ規格
3-4.基本規格
主に試験方法が書かれている規格。その試験方法で試験を行うため、あらゆる製品に適用できます。以下に例を紹介します。
〈例〉
エミッション規格・イミュニティ規格
- CISPR16-1-1:測定用受信機
- CISPR16-1-2:補助装置-伝導妨害波
- CISPR16-1-3:補助装置-妨害波電力
- CISPR16-1-4:放射妨害波用アンテナと試験場
エミッション規格
- CISPR16-1-1:測定用受信機
- CISPR16-1-2:補助装置-伝導妨害波
- CISPR16-1-3:補助装置-妨害波電力
- CISPR16-1-4:放射妨害波用アンテナと試験場
イミュニティ規格
- IEC61000-4-1:イミュニティ試験の概要
- IEC61000-4-2:静電気放電
- IEC61000-4-3:放射電磁界
- IEC61000-4-4:ファストトランジェント・バースト
- IEC61000-4-5:サージ
- IEC61000-4-6:放射電磁界によって誘導された伝導妨害
4.日本の代表的なEMC規格
日本国内の代表的な規格にはVCCI規格やJIS規格(日本産業規格)が挙げられます。
4.1 VCCI規格
正式名称は「情報処理装置等電波障害自主規制協議会」。マルチメディア機器を対象としたエミッション規格です。
1985年、CISPR勧告「情報処理装置および電子事務用機器等から発生する妨害波の許容値と測定法」を受けて、関係業界4団体である(社)日本電子工業振興協会(JEIDA)、(社)日本事務機器工業会(JBMA)、(社)日本電子機械工業会(EIAJ)、通信機械工業会(CIAJ)※4によって設立されました。
技術基準は「CISPR32 マルチメディア機器の電磁両立性-エミッション要求事項(国際規格で引用したEMCの民の表現なので変更)」となります。
※4.日本電子工業振興協会と日本電子機械工業会は、現・電子情報技術産業協会の前身です。
4.2 電気用品安全法(電安法/PES)
電気用品安全法は、電気用品の製造、輸入、販売などを規制するとともに、日本国内で製造されている電気用品に対する危険および障害の発生を防止する目的で設立された法律です。
- 特定電気用品(116品目)
- 特定以外の電気用品(341品目)
が対象となります。
電気用品安全法のEMCに関する規制
エミッションに関する要求
「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」の「別表第十(雑音の強さ)※5」
※5.引用元:経済産業省資料より、別表第十(雑音の強さ)
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/beppyoudai10.pdf
イミュニティに関する要求
「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」の「別表第十二(国際規格等に準拠した基準)※6」技術基準は「別表第十:日本独自規格」、「別表第十二:CISPR」となります。
※6.引用元:経済産業省資料より、別表第十二(国際規格等に準拠した基準)
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/beppyoudai12.pdf
以下のようにVCCIは自主規制、電安法は法規制となります。
VCCIに法的拘束力はありませんが、その普及率を考えると、法規制に近いものになっているといえます。
※引用元:総務省 電波利用ホームページ資料より https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/equ/mra/pdf/24/j-20.pdf
4.3 JIS規格(日本産業規格)
JIS規格はJapanese Industrial Standardsの略。日本の産業標準化の促進を目的として設立された産業標準化法※7に基づき制定される国家規格です。
自動車や電化製品などの鉱工業品から、データ、サービスまで多彩な規格があり、任意のもから強制的なもの(法令の技術基準に引用されている場合)までさまざまです。令和4年3月末現在の規格総数は10,918となります。
また、世界的に「国際規格」の重要性が高まる中、JISも積極的に国際規格との整合性※8を図っています。
※7.令和元年7月1日の法改正によって工業標準化法から産業標準化法へと名称が変更されました。
※8.日本は1995年のWTO(世界貿易機関)/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)発効に伴い、国際規格(ISOおよびIEC)に準ずることが定められています。すべての規格を同時に国際規格に適合させることは困難であるため、実際には規格見直しのタイミングで国際規格適合の改定がなされています。