EMC試験の電波暗室を大解剖!
皆さん「電波暗室」という言葉をご存じですか? 現代に暮らす私たちの周りには、目に見えないさまざまな電波や電磁波が飛び交っています。その電波や電磁波を完全に遮断できる特別な部屋が「電波暗室」です。この部屋では外から来る電磁波の影響を受けない状態をつくり、電子機器に対する電磁波の影響を調べる「EMC試験」が行われています。
今回の記事ではデンケン中部センターの電波暗室にお邪魔して、電波暗室のあれこれについて、営業の杉浦さんに詳しく聞いてきました。
【この記事でわかること】
1. 電波暗室とはどんな部屋?
2. 電波暗室の全体像
3. 電波暗室の壁の厚さは?
4. 隣接する計測室の様子
5. シールド扉とスロープの紹介
電波暗室とはどんな部屋?
電波暗室は、EMC試験を行う試験室のひとつです。
私たちの周りには、スマートフォンの通信、Wi-Fi、Bluetoothなど、目に見えない電波が常に飛び交っています。そこで電子機器・電気機器を市場投入する際には「製品が電磁ノイズを出して他の機器に影響を与えてしまわないか」「製品が外来ノイズを受けて動作が変わってしまわないか」を調べる「EMC試験」を、発売前に実施する必要があります。
そして今回のテーマである「電波暗室」は、「外から電磁波の影響を受けず、中からの電磁波を反射しない」という特徴をもった特別な部屋です。EMC試験では電子・電気機器の電磁波の影響を調べますので、正しく試験を行うためには、電磁波の影響を受けない電波暗室の中で試験を実施する必要があるのです。
では、実際の電波暗室を覗いてみましょう。
電波暗室の全体像をチェック
電波暗室は部屋全体が金属板で覆われていて、壁には電波を遮断する「シールド材」が使われていますが、表面に見えるのは壁の表面を覆う表面保護材です。表面保護材にシールド性能はなく、部屋全体の明るさを維持するために白が採用されています。
部屋の中央は電波の影響を調べる試験を実施するエリアで、ノイズを放射するアンテナと大きなテーブルが備えられています。試験の内容によりアンテナは都度変わります。
部屋の奥に移動して、アンテナの正面側から撮影してみました。テーブルの上には1x3mの銅板が常設されています。この部屋全体が車載部品のノイズ評価ができる仕様になっており、金属で覆われた車を模擬するために、テーブル上に銅板が設置してあるということです。銅板はテーブル上から床まで伸びていて、床からアースに接続しています。
テーブルの中央、白い台座の上にある黒い物体は「電界強度計」という計器です。電界強度計では、こちらはアンテナから放射されているノイズが正しい値になっているかを確認します。
室内には「アンテナマスト」も設置されています。必要に応じてアンテナを回転させ、X軸・Y軸の切り替えを行います。
厚さ20cmの壁で電波を遮断
では、ここから電波暗室の最大の特徴である壁を見ていきましょう。電波暗室の壁は外からの電磁波を通さないように厚い金属でできています。壁の厚みは20cmもあり、空間を飛び交う電波・電磁波を複数の層で遮断します。
この写真では、壁の左側が計測室、右側が電波暗室です。壁の層は、左から順に金属のシールド面、電波を遮るフェライト面、電波吸収体、白い表面保護用キャップです。デンケン中部センターには電波暗室が2室あり、両室ともに床を除く5面がこのような構造になっています。
こちらの写真では、見やすいように表面保護材を外していただきました。右端の黒い部分がフェライト面、その上にあるグレーの突起があるところが電波吸収体、表面の白い板が表面保護材です。
隣接の計測室から試験の様子をモニターできる
EMC試験では強い電磁波を出すこともあるため、試験中は室内に人が立ち入ることはできません。立会試験では電波暗室に隣接する計測室に待機して、試験の様子を見守ることになります。
電波暗室全体を見渡せる場所にカメラがついていますが、こちらは電磁波を出さない特別な機種を選定しています。
カメラからの画像は計測室のモニターで確認することができます。また、試験をデンケンのスタッフに試験をお任せいただく委託試験でも、試験の様子をオンラインで確認いただけます。
計測室には試験の過程で対策ができるよう、半田ごてが使えるスペースも用意しています。右のドアが電波暗室への入口です。
搬入出しやすいスロープを完備
電波暗室へのドアも13cmほどの厚さがあり、扉を閉じた状態で電磁波を遮蔽できる「シールド扉」を採用しています。確実に遮蔽するために、空気圧でロックする仕様になっています。
扉にはスロープが備えられています。こちらのスロープは扉が閉まっているときは床下に格納されていて、扉を開けると自動で上がる機構です。機材の搬入出がしやすく便利な作りになっていますのでぜひご活用ください。
まとめ
この記事では、デンケン中部センターの電波暗室を徹底解剖し、その全体像に迫りました。電波暗室は、EMC試験に適した環境にするために複数の特殊な素材の層で覆われていること、試験中の様子が外からモニターできること、搬入出しやすいスロープがあることなど、電波暗室の状況がよくわかりました。
デンケンは車載EMC試験、半導体EMC試験に強い試験サイトです。試験日程についてはオンラインで空き状況を確認でき、2回目からはオンライン予約も可能になっています。愛知県でEMC試験サイトをお探しの場合は、デンケン中部センターをぜひご検討ください。
デンケンEMC試験所 試験日程表
https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です
お問い合わせ・ご予約
電話 : 0566-95-2170
メール : https://emc-dkn.com/contact/
教えてくれた人
デンケン中部センター 杉浦 貴紀 デンケン中部センターで営業担当をしている杉浦です。このブログでは当サイトでの試験情報についてご紹介していきますのでよろしくお願いします。
この記事を書いた人
ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/
皆さん「電波暗室」という言葉をご存じですか? 現代に暮らす私たちの周りには、目に見えないさまざまな電波や電磁波が飛び交っています。その電波や電磁波を完全に遮断できる特別な部屋が「電波暗室」です。この部屋では外から来る電磁波の影響を受けない状態をつくり、電子機器に対する電磁波の影響を調べる「EMC試験」が行われています。
今回の記事ではデンケン中部センターの電波暗室にお邪魔して、電波暗室のあれこれについて、営業の杉浦さんに詳しく聞いてきました。
【この記事でわかること】 1. 電波暗室とはどんな部屋? 2. 電波暗室の全体像 3. 電波暗室の壁の厚さは? 4. 隣接する計測室の様子 5. シールド扉とスロープの紹介 |
電波暗室とはどんな部屋?
電波暗室は、EMC試験を行う試験室のひとつです。
私たちの周りには、スマートフォンの通信、Wi-Fi、Bluetoothなど、目に見えない電波が常に飛び交っています。そこで電子機器・電気機器を市場投入する際には「製品が電磁ノイズを出して他の機器に影響を与えてしまわないか」「製品が外来ノイズを受けて動作が変わってしまわないか」を調べる「EMC試験」を、発売前に実施する必要があります。
そして今回のテーマである「電波暗室」は、「外から電磁波の影響を受けず、中からの電磁波を反射しない」という特徴をもった特別な部屋です。EMC試験では電子・電気機器の電磁波の影響を調べますので、正しく試験を行うためには、電磁波の影響を受けない電波暗室の中で試験を実施する必要があるのです。
では、実際の電波暗室を覗いてみましょう。
電波暗室の全体像をチェック
電波暗室は部屋全体が金属板で覆われていて、壁には電波を遮断する「シールド材」が使われていますが、表面に見えるのは壁の表面を覆う表面保護材です。表面保護材にシールド性能はなく、部屋全体の明るさを維持するために白が採用されています。
部屋の中央は電波の影響を調べる試験を実施するエリアで、ノイズを放射するアンテナと大きなテーブルが備えられています。試験の内容によりアンテナは都度変わります。
部屋の奥に移動して、アンテナの正面側から撮影してみました。テーブルの上には1x3mの銅板が常設されています。この部屋全体が車載部品のノイズ評価ができる仕様になっており、金属で覆われた車を模擬するために、テーブル上に銅板が設置してあるということです。銅板はテーブル上から床まで伸びていて、床からアースに接続しています。
テーブルの中央、白い台座の上にある黒い物体は「電界強度計」という計器です。電界強度計では、こちらはアンテナから放射されているノイズが正しい値になっているかを確認します。
室内には「アンテナマスト」も設置されています。必要に応じてアンテナを回転させ、X軸・Y軸の切り替えを行います。
厚さ20cmの壁で電波を遮断
では、ここから電波暗室の最大の特徴である壁を見ていきましょう。電波暗室の壁は外からの電磁波を通さないように厚い金属でできています。壁の厚みは20cmもあり、空間を飛び交う電波・電磁波を複数の層で遮断します。
この写真では、壁の左側が計測室、右側が電波暗室です。壁の層は、左から順に金属のシールド面、電波を遮るフェライト面、電波吸収体、白い表面保護用キャップです。デンケン中部センターには電波暗室が2室あり、両室ともに床を除く5面がこのような構造になっています。
こちらの写真では、見やすいように表面保護材を外していただきました。右端の黒い部分がフェライト面、その上にあるグレーの突起があるところが電波吸収体、表面の白い板が表面保護材です。
隣接の計測室から試験の様子をモニターできる
EMC試験では強い電磁波を出すこともあるため、試験中は室内に人が立ち入ることはできません。立会試験では電波暗室に隣接する計測室に待機して、試験の様子を見守ることになります。
電波暗室全体を見渡せる場所にカメラがついていますが、こちらは電磁波を出さない特別な機種を選定しています。
カメラからの画像は計測室のモニターで確認することができます。また、試験をデンケンのスタッフに試験をお任せいただく委託試験でも、試験の様子をオンラインで確認いただけます。
計測室には試験の過程で対策ができるよう、半田ごてが使えるスペースも用意しています。右のドアが電波暗室への入口です。
搬入出しやすいスロープを完備
電波暗室へのドアも13cmほどの厚さがあり、扉を閉じた状態で電磁波を遮蔽できる「シールド扉」を採用しています。確実に遮蔽するために、空気圧でロックする仕様になっています。
扉にはスロープが備えられています。こちらのスロープは扉が閉まっているときは床下に格納されていて、扉を開けると自動で上がる機構です。機材の搬入出がしやすく便利な作りになっていますのでぜひご活用ください。
まとめ
この記事では、デンケン中部センターの電波暗室を徹底解剖し、その全体像に迫りました。電波暗室は、EMC試験に適した環境にするために複数の特殊な素材の層で覆われていること、試験中の様子が外からモニターできること、搬入出しやすいスロープがあることなど、電波暗室の状況がよくわかりました。
デンケンは車載EMC試験、半導体EMC試験に強い試験サイトです。試験日程についてはオンラインで空き状況を確認でき、2回目からはオンライン予約も可能になっています。愛知県でEMC試験サイトをお探しの場合は、デンケン中部センターをぜひご検討ください。
デンケンEMC試験所 試験日程表
https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です
お問い合わせ・ご予約
電話 : 0566-95-2170
メール : https://emc-dkn.com/contact/
教えてくれた人
デンケン中部センター 杉浦 貴紀 デンケン中部センターで営業担当をしている杉浦です。このブログでは当サイトでの試験情報についてご紹介していきますのでよろしくお願いします。 |
この記事を書いた人
ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/ |