2024年発行!JASO D020規格のポイントを解説します

2024年3月、自動車技術会が制定する工業規格「JASO」から、電装部品に関する規格「JASO D020」が発行されました。この規格は「自動車用電気電子部品のインピーダンス 等価性試験方法」に関するもので、主に部品の生産工場変更やメーカー変更、製造工程の変更時における電磁波特性の評価方法について規定しています。

【この記事でわかること】
・2024年3月に発行されたJASO D020規格の目的と概要
・インピーダンス等価性試験で確認する2つのポイント
・JASO D019とD020の違いを整理
・素子の特性(受動素子/能動素子)について

愛知県刈谷市にあるEMC試験サイト、デンケン中部センターにも、JASO D020に関するお問い合わせや試験依頼が増えてきています。そこで今回は、発行から日が浅くまだ情報が少ない「JASO D020」について、規格の概要と活用シーン、デンケンでの実績を含めてわかりやすく解説していきます。

JASO D020規格の概要

JASO D020は主に部品変更時の電磁波の影響を評価するための規格で、素子単体と、それを含む回路のインピーダンス等価性試験について、国際規格のCISPR 17を参照して規定されています。

試験のポイントは次の3点です。

  1. インピーダンス特性の評価
    変更前後の部品で、電気の流れにくさ(インピーダンス)を比較します。この値が大きく変わると、製品の電磁波特性に影響を与える可能性があります。
  2. Sパラメータの測定
    電気信号の伝わり方を示す「Sパラメータ」を測定します。部品を含む回路全体での電磁波の影響を評価する際に重要な指標となります。
  3. 等価性の判定
    測定結果から、変更前後の部品が電磁波の観点で同等の性能を持つかを判断します。

まとめると、部品変更の前後の製品が同じ性能かどうかを確認するために「インピーダンス特性」「Sパラメータ測定」などの試験を行い、前後の比較により等価性を判定するルールを決めている規格ということです。

なお、この規格はノイズ(不要な電気信号)が伝わる可能性のある部品を主な対象としており、通常の動作確認や静電気への耐性などは対象としていません。

・JASO D019とD020の違い

JASO D019とD020は、どちらも電子部品のPCN(製品変更通知)発行時やEOL(生産終了)対応で実施される試験です。混同されやすいので違いを見てみましょう。

JASO D019:自動車用半導体EMC性能等価性試験法

・自動車に搭載する部品が外来ノイズを受けて動作・性能が変わってしまわないか(伝導イミュニティ)、製品がノイズを出して他の機器に影響を与えてしまわないか(伝導エミッション)を調べる試験

・主にDPI法、150Ω法を用いる

▶ JASO D020: 自動車用電気電子部品のインピーダンス 等価性試験方法

・自動車に搭載する電子部品を変更するとき、変更前と変更後でインピーダンス(電気の流れにくさ)とSパラメータ(電気信号の伝わり方)がどのくらい違うかを調べる試験

・主にインピーダンスとSパラメータの測定を行う

このように、JASO D019とD020では、試験の目的と試験内容が異なります。そこで、どちらの試験を行うか(もしくは両方実施するか)については、対象製品と用途によって、お客様やエンドユーザー様がケースバイケースで判断されています。

素子の特性(受動素子/能動素子)について

さて、EMC分野の専門用語では、素子の特性から「受動素子」と「能動素子」と分類することがあります。それぞれの特徴を確認してみましょう。

▶ 受動素子とは

・電力の供給に対して消費・蓄積など受動的な働きをする素子
・具体例:抵抗器、コンデンサ、コイルなど
・特徴:電力を蓄積・放出する機能を持つ

▶ 能動素子とは

・供給された電力を増幅、整流、変換するなど、能動的に影響を与える素子
・具体例:集積回路(IC)、真空管、リレー、トランジスタ、フォトダイオード、発光ダイオードなど
・特徴:自ら能動的に働きかける機能を持つ

実際の試験方法の選択においては、素子の種類だけでなく、対象製品の用途や使用環境、お客様の要求事項など、様々な要素を考慮して総合的に判断する必要があります。

・まとめ

この記事では、自動車用電気電子部品の変更時における電磁波特性の評価のうち、主にインピーダンスとSパラメータによる評価のルールを規定した新しい規格「JASO D020」の概要を紹介しました。

【この記事のまとめ】
・2024年3月に発行されたJASO D020規格の目的と概要
・インピーダンス等価性試験で確認する2つのポイント
・JASO D019とD020の違いを整理
・素子の特性(受動素子/能動素子)について

2024年から始まったばかりの新しい規格ではありますが、デンケン中部センターでは、JASO D020に基づく試験の実施が可能です(2025年1月現在)。規格に準拠した試験環境を整備しており、お客様のニーズに応じた評価をご提供できますのでお気軽にご相談ください。

デンケン中部センター 試験日程表
https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です

・初回予約の方法

電話 0566-95-2170

お問合せ先 https://www.dkn.co.jp/contact/ 

教えてくれた人

屋内, 男, 天井, 立つ が含まれている画像

自動的に生成された説明デンケン中部事業所 杉浦 貴紀   デンケン中部事業所で営業担当をしている杉浦です。このブログでは当サイトでの試験情報についてご紹介していきますのでよろしくお願いします。

この記事を書いた人

人, 屋内, 男, 女性 が含まれている画像

自動的に生成された説明ものづくりライター 新開 潤子   製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。   https://office-kiitos.biz/

資料ダウンロード

資料ダウンロード

半導体・車載のEMC試験の詳細資料と、半導体の評価・解析・組立など受託業務の詳細資料がダウンロード可能となります。