ドローン評価技術のシンポジウムに登壇 ~EMC試験の知見を新分野へ
2025年1月10日、大分県産業科学技術センター主催のシンポジウム「ドローン・空モビリティ評価技術の今後 ~EMCから上空の電波アセスメントまで~」が開催されました。
ドローンは近年、技術革新が進んでいますが、自ら発する電磁ノイズや外部からの電磁ノイズに対する脆弱性という課題は残されたままの状況です。特にGNSS(全球測位衛星システム)や地磁気などのセンシング機能が電磁ノイズの影響を受けると、墜落などの重大事故につながる可能性があります。
このような背景から、大分県産業科学技術センターは2017年度よりドローンのEMC電磁両立性)評価に取り組んできました。本シンポジウムでは自動車部品と半導体のEMC試験で豊富な実績を持つデンケンにお声がけいただき、中部センターの植木英晶所長が「自動車部品および半導体分野でのEMC試験について」というテーマで発表を行いました。
シンポジウムに見るドローン分野の最新動向
当日は会場に約50名、オンラインも含めると約130名の参加者が集まりました。ドローン関連企業、通信事業者、部品メーカー、試験機関、行政関係者など、多岐にわたる業界からの参加があり、ドローン・空モビリティ分野の注目度の高さがうかがえました。
会はドローン技術の第一人者である東京大学の鈴木真二名誉教授が「ドローン・空モビリティの現状と課題」についての基調講演から始まり、「無人機におけるノイズ対策・通信評価について」「ドローンとEMC」「評価技術」「ドローンによる実際の電波・地磁気・GNSS計測事例」「保険会社からのリスク評価」など、ドローンに関するさまざまなテーマでの発表・議論が続きました。
デンケンはEMCの基本情報と事例を紹介
「自動車部品及び半導体へのEMC試験について」と題した植木所長の発表は、最初に「当社はドローン製品へのEMCはまだ手掛けておりませんが、EMCへの耐性をとても重要視されている自動車部品へのEMCサービスをご提供しております」と前置きしたうえで、デンケンが取り組んでいる自動車部品と半導体のEMC試験について紹介しました。

「自動車部品及び半導体へのEMC試験」発表資料の表紙
特に、EMCの基本概念である「影響を与えない」「影響を受けない」という二つの観点とEMCの必要性、自動車の安全性確保におけるEMC試験の重要性を説明し、半導体不足への対応として、半導体EMC試験による半導体部品の互換性確認を行った事例なども紹介しました。

「半導体部品」へのEMC試験
今回の参加者には、ドローンや通信技術には詳しいものの「EMCについてはまだよくわからない」という方も多かった様子で、EMCの基本的な概念や事例について、真剣に聞き入っていただけました。
自動車からドローンへ:EMC技術の応用可能性
さて、自動車産業では「自動化」「電動化」「各種システムの高度化」「通信機能の発達」など、さまざまな技術革新に伴ってEMC対策の重要性が高まってきました。その背景には、自動車が一般の電気製品よりも過酷な環境で使用され、かつ人命に関わる安全性の確保が不可欠という特徴があります。
それを踏まえて、植木所長は「ドローン分野、特に将来的な空飛ぶクルマ(eVTOL:イーブイトール)などでは、システムの複雑さに加え、空中を飛行するという特性や、モーター・バッテリーの使用環境を考慮すると、自動車と同等かそれ以上に厳しいEMCが要求される可能性がある」と言及。そのうえで自動車部品と半導体のEMC試験で培ってきた技術やノウハウが、ドローンに搭載される電子機器の評価にも応用可能であることを説明しました。
シンポジウム後の名刺交換会では、ドローン関連企業や部品メーカー、試験機関など、多岐にわたる業界の方々から「今後ドローン分野でもEMCが重要になってくる」という声が多く聞かれ、デンケンの自動車部品および半導体分野でのEMC試験の実績のドローン分野への応用について、大きな期待が寄せられました。
ドローン分野におけるEMCの課題と展望
ドローンは今後、物流や点検、災害対応など、さまざまな用途での活用が期待されており、安全性確保の観点からEMC評価の重要性は一層高まっていくと思われます。
しかし現状では、ドローン専用のEMC規格や基準については明確に定められていません。各国や自治体が独自の基準で運用している段階であり、国際標準化はこれからの課題です。特に、ドローンの用途が運搬や調査だけでなく、軍事目的や空飛ぶタクシーなど多岐にわたるため、統一的な規制の枠組み作りが課題となっています。
・まとめ
この記事では、2025年1月10日に開催されたドローン・空モビリティの評価技術シンポジウムについて、特にEMC試験の知見を新分野へ展開する可能性と、ドローン分野におけるEMCの現状・課題についてご紹介しました。
この記事のまとめ
・自動車産業で培ったEMC試験の知見は、ドローン分野にも応用可能
・ドローンでは自動車以上に厳しいEMC要求が予想される
・ドローン専用のEMC規格
・基準の国際標準化が今後の課題
デンケン中部センターでは、EMC試験の空き状況をオンラインで確認でき、電話でご予約いただけます。EMC試験に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
デンケン中部センター 試験日程表 https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です
初回予約の方法
電話 0566-95-2170 メール https://www.dkn.co.jp/contact/
教えてくれた人

デンケン中部センター 植木 英晶
デンケン中部センターのセンター長兼EMC試験所長。2009年より評価解析技術に携わり、2017年の中部事業所開設とともにセンター長に就任。EMCの専門技術者として、車載部品と半導体のEMCの評価・検証・普及に取り組んでいる。
この記事を書いた人

ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/
2025年1月10日、大分県産業科学技術センター主催のシンポジウム「ドローン・空モビリティ評価技術の今後 ~EMCから上空の電波アセスメントまで~」が開催されました。
ドローンは近年、技術革新が進んでいますが、自ら発する電磁ノイズや外部からの電磁ノイズに対する脆弱性という課題は残されたままの状況です。特にGNSS(全球測位衛星システム)や地磁気などのセンシング機能が電磁ノイズの影響を受けると、墜落などの重大事故につながる可能性があります。
このような背景から、大分県産業科学技術センターは2017年度よりドローンのEMC電磁両立性)評価に取り組んできました。本シンポジウムでは自動車部品と半導体のEMC試験で豊富な実績を持つデンケンにお声がけいただき、中部センターの植木英晶所長が「自動車部品および半導体分野でのEMC試験について」というテーマで発表を行いました。
シンポジウムに見るドローン分野の最新動向
当日は会場に約50名、オンラインも含めると約130名の参加者が集まりました。ドローン関連企業、通信事業者、部品メーカー、試験機関、行政関係者など、多岐にわたる業界からの参加があり、ドローン・空モビリティ分野の注目度の高さがうかがえました。
会はドローン技術の第一人者である東京大学の鈴木真二名誉教授が「ドローン・空モビリティの現状と課題」についての基調講演から始まり、「無人機におけるノイズ対策・通信評価について」「ドローンとEMC」「評価技術」「ドローンによる実際の電波・地磁気・GNSS計測事例」「保険会社からのリスク評価」など、ドローンに関するさまざまなテーマでの発表・議論が続きました。
デンケンはEMCの基本情報と事例を紹介
「自動車部品及び半導体へのEMC試験について」と題した植木所長の発表は、最初に「当社はドローン製品へのEMCはまだ手掛けておりませんが、EMCへの耐性をとても重要視されている自動車部品へのEMCサービスをご提供しております」と前置きしたうえで、デンケンが取り組んでいる自動車部品と半導体のEMC試験について紹介しました。

「自動車部品及び半導体へのEMC試験」発表資料の表紙
特に、EMCの基本概念である「影響を与えない」「影響を受けない」という二つの観点とEMCの必要性、自動車の安全性確保におけるEMC試験の重要性を説明し、半導体不足への対応として、半導体EMC試験による半導体部品の互換性確認を行った事例なども紹介しました。

「半導体部品」へのEMC試験
今回の参加者には、ドローンや通信技術には詳しいものの「EMCについてはまだよくわからない」という方も多かった様子で、EMCの基本的な概念や事例について、真剣に聞き入っていただけました。
自動車からドローンへ:EMC技術の応用可能性
さて、自動車産業では「自動化」「電動化」「各種システムの高度化」「通信機能の発達」など、さまざまな技術革新に伴ってEMC対策の重要性が高まってきました。その背景には、自動車が一般の電気製品よりも過酷な環境で使用され、かつ人命に関わる安全性の確保が不可欠という特徴があります。
それを踏まえて、植木所長は「ドローン分野、特に将来的な空飛ぶクルマ(eVTOL:イーブイトール)などでは、システムの複雑さに加え、空中を飛行するという特性や、モーター・バッテリーの使用環境を考慮すると、自動車と同等かそれ以上に厳しいEMCが要求される可能性がある」と言及。そのうえで自動車部品と半導体のEMC試験で培ってきた技術やノウハウが、ドローンに搭載される電子機器の評価にも応用可能であることを説明しました。
シンポジウム後の名刺交換会では、ドローン関連企業や部品メーカー、試験機関など、多岐にわたる業界の方々から「今後ドローン分野でもEMCが重要になってくる」という声が多く聞かれ、デンケンの自動車部品および半導体分野でのEMC試験の実績のドローン分野への応用について、大きな期待が寄せられました。
ドローン分野におけるEMCの課題と展望
ドローンは今後、物流や点検、災害対応など、さまざまな用途での活用が期待されており、安全性確保の観点からEMC評価の重要性は一層高まっていくと思われます。
しかし現状では、ドローン専用のEMC規格や基準については明確に定められていません。各国や自治体が独自の基準で運用している段階であり、国際標準化はこれからの課題です。特に、ドローンの用途が運搬や調査だけでなく、軍事目的や空飛ぶタクシーなど多岐にわたるため、統一的な規制の枠組み作りが課題となっています。
・まとめ
この記事では、2025年1月10日に開催されたドローン・空モビリティの評価技術シンポジウムについて、特にEMC試験の知見を新分野へ展開する可能性と、ドローン分野におけるEMCの現状・課題についてご紹介しました。
この記事のまとめ ・自動車産業で培ったEMC試験の知見は、ドローン分野にも応用可能 ・ドローンでは自動車以上に厳しいEMC要求が予想される ・ドローン専用のEMC規格 ・基準の国際標準化が今後の課題 |
デンケン中部センターでは、EMC試験の空き状況をオンラインで確認でき、電話でご予約いただけます。EMC試験に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
デンケン中部センター 試験日程表 https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です
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電話 0566-95-2170 メール https://www.dkn.co.jp/contact/
教えてくれた人
![]() | デンケン中部センター 植木 英晶 デンケン中部センターのセンター長兼EMC試験所長。2009年より評価解析技術に携わり、2017年の中部事業所開設とともにセンター長に就任。EMCの専門技術者として、車載部品と半導体のEMCの評価・検証・普及に取り組んでいる。 |
この記事を書いた人
![]() | ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/ |