半導体EMCで車載EMC試験を効率化する「とっておきの方法」とは

 EMC試験といえば「車載EMC」を思い浮かべる方が多いと思いますが、半導体のデバイスレベルでEMC試験を行う「半導体EMC」という分野もあります。実はこの

 そこで今回は、半導体EMCに強いEMCサイト、デンケン中部センターの杉浦さんに、車載EMCと半導体EMCの違いと、半導体EMCを活用して車載試験を効率化する「とっておきの方法」を教えていただきました。

【この記事でわかること】
・車載EMCと半導体EMC、2分野の違いについて
・車載EMC試験とは
・半導体EMC試験とは
・半導体EMCで車載EMC試験を効率化する「とっておきの方法」

車載EMCと半導体EMC、2分野の違いについて

 最初に「EMC試験」の基本を確認しておきたいと思います。EMC試験で確認するのは、主に
・製品が電磁波を出して他の機器に影響を与えてしまわないか
・製品が外来の電磁波を受けて動作が変わってしまわないか
の2点。これを確認するために、電磁波の影響を受けない環境で評価・測定を実施するのがEMC試験です。

 これを踏まえて、車載EMCと半導体EMCの違いは次のようになっています。

・車載EMCは、自動車に搭載する部品に対して行うEMC試験。主に自動車部品メーカーからご依頼いただく

・半導体EMCは、自動車部品に限らず、個々の半導体デバイスに対して行うEMC試験。自動車部品メーカーだけでなく、半導体メーカーや電機機器メーカーなどから広くご依頼いただく

 車載EMCと半導体EMC、それぞれに国際規格が定義されていますが、特に車載EMCでは国際規格に準じた各メーカーの規格も設定されています。詳しく見ていきましょう。

車載EMC試験とは

 最近の自動車は、主要な部品が電子機器で構成されています。しかし、搭載した電子機器同士が影響し合って想定外の動作した場合、人命に関わる大事故につながる恐れもあります。そこで「搭載した電子機器同士が影響し合って想定外の動作をしないこと」をあらかじめ確認しておかないと、車に搭載することができません。それを確認する試験が「車載EMC試験」です。

 車載EMC試験では、車に搭載されるエアコンパネルやセンサー、ECU(エンジン制御ユニット)などの部品が他の電子機器に影響を与えないか、また他の電子機器からの電磁波に対して正常に動作するかを、規格に準拠して確認します。

 車載EMCでは、国際規格でCISPR25、ISO11452など車載向けの規格が設けられています。自動車に部品を搭載してもらうためには、これらの規格に準拠した試験をパスする必要があります。

自動車に搭載する電子機器の電磁波の影響を調べるのが車載EMC

 実際にはCISPRとISOに準拠した自動車メーカーごとの規格があるため、デンケンでは主に自動車メーカー各社の規格に適合しているかどうかを試験しています。

半導体EMC試験とは

「半導体EMC」は、電機機器に使用される半導体デバイスを個別にテストする試験です。半導体の国際規格では、IEC62132、IEC61967で電磁波の影響を調べる測定方法として定義されており、これらの規格に則って、半導体が適合しているかどうかを調べるのが半導体EMC試験です。

 また、半導体EMC試験は車載部品のEMCにも活用可能で、自動車関連の工業会で、国際規格をもとにしたJASO D019 JEITA ED-5008 など、自動車向け半導体のEMC試験法も定義されています。

 車載部品にも複数の半導体が搭載されることが多いため、個々の半導体デバイスがどのように電磁波に対して動作するかを確認する試験を実施しています。

 特に最近ご要望が多いのは、EOL(生産停止)やPCN(製品変更通知)への対応です。例えば車載部品の量産が終わった後などに、製品に搭載されているICの一つが生産終了や製品変更となるケースがあります。このようなケースでは、ICが1個変わっただけで車載EMC試験を一からやり直す必要があり、これに大変な時間・労力・コストがかかります。

 そんなときは「半導体EMC」の出番です。半導体EMC試験で半導体デバイス単体の電磁波の影響を確認し、試験をパスすることができれば、そのICが搭載された全ての車載部品の検査をやり直す必要がなくなります。デンケンではこのようなケースで半導体EMC試験を実施いただくご依頼が増えきています。 

半導体EMCで車載EMC試験を効率化する「とっておきの方法」

 ではここから、半導体EMC試験を活用することで、車載部品のEMC試験にかかるコストと時間を大幅に削減できる「とっておきの方法」をお伝えします。

 一般的に車載EMCでは、1部品に対して10種類のEMC試験を実施しますが、半導体EMCは3試験で必要な範囲をカバーすることができます。

 そして、車載部品には複数の半導体が搭載されているものが多いことは、ここまでお読みいただいた方は既にご存じだと思います。例えばECU(エンジン制御ユニット)にも異なる機能を持つ半導体が複数組み込まれています。

 また、1つのICが複数の車載部品(ECU、エアコンパネル、センサーなど)に採用されているケースも多いですよね。このように複数の車載部品に共通の半導体が採用されている場合、半導体を個別に試験することで、車載部品全体の試験回数を減らし、試験を劇的に効率化することができます。


共通の半導体が複数の車載部品で採用されている場合は、半導体EMCで試験を劇的に効率化できる

 

 例として、車載部品10個のEMC試験をするケースを見てみましょう。車載EMCでは通常、部品ごとに5~10種類のEMC試験を実施しますので、車載部品10個×5試験=50回のEMC試験が必要になります。

 それが半導体EMCでは、半導体1個につき3試験(DPI法、150Ω法、インピーダンス測定)で、必要な範囲をカバーすることができます。

【1種類の半導体が変更され、10個の車載部品でEMC試験を実施する場合】
車載EMC : 車載部品10個×5試験=50試験(50日)
半導体EMC: 半導体1個×3試験=3試験(25日) → 試験回数を約5割削減できる

 このように同じ種類の半導体が複数の車載部品に搭載されている場合、半導体単体でのEMC試験を活用することで、試験回数を大幅に削減できます。共通の半導体が複数の車載部品に使われている場合、その半導体を個別に3つのEMC試験を実施するだけで済み、この3つの試験結果が基準をクリアしていれば、その半導体を搭載している全ての車載部品も基準をクリアしていると見なされますので、大幅な効率化が可能になるということです。

 また、最近は車載部品のJASOの規格が決まってきており、JASO D019では半導体EMC試験が推奨されるようになりました。車載部品でも半導体EMCの試験ができるデンケン中部センターを選定いただくことで、車載だけでなく半導体EMCまでを包括的に、効率的に実施していただけますのでぜひご検討ください。

まとめ

 車載EMCは車載部品のEMC試験、半導体EMCは半導体デバイス単体のEMC試験という違いがあり、半導体EMCを上手に活用すれば、車載EMC試験を効率的・効果的に実施することができます。

【半導体EMC活用のメリット】
コスト削減:試験回数が大幅に減るため、試験にかかる費用を削減できます。
時間の節約:試験期間が短縮されるため、製品の市場投入までの時間を短縮できます。
人手の節約:試験を行う人員の負担が軽減されるため、他の重要な業務にリソースを振り向けることができます。

 デンケン中部センターでは、EMC試験の空き状況をオンラインで確認でき、電話でご予約いただけます。半導体EMCのメリットを活かした車載EMC試験の効率化を検討したい方はぜひお問い合わせください。

デンケンEMC試験所 試験日程表
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※2回目以降はオンライン予約も可能です

お問い合わせ・ご予約

電話  : 0566-95-2170

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教えてくれた人

デンケン中部センター 杉浦 貴紀   デンケン中部センターで営業担当をしている杉浦です。このブログでは当サイトでの試験情報についてご紹介していきますのでよろしくお願いします。

この記事を書いた人

ものづくりライター 新開 潤子   製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。   https://office-kiitos.biz/