【初心者向け】EMC試験とは? どこよりもやさしく解説します|デンケン中部センター

「EMC試験」に初めて仕事でかかわることになった人は、EMCについて「何だか難しそう……」というイメージを持っているかもしれません。また、EMC試験について改めて見直したいときなどに解説を探しても、難しい記事が多くて途方に暮れたりしていませんか?

そこで、EMC試験が必要な理由や概要について、愛知県刈谷市にあるIEC、ISO17025認定試験場「デンケン中部センター」の杉浦さんに、初心者向けにわかりやすく&やさしく説明していただきました。おそらくどこよりも優しい解説で、EMC試験の基本を掴んでくださいね。

【この記事でわかること】
・EMC試験とは、どんな試験か?
・EMC試験で知っておきたい基本の2試験 ・ノイズって何ですか?
・EMC試験の内容 ・EMC試験の流れ

EMC試験とは、どんな試験ですか?

わかりやすいように、まずは自動車部品の試験を例にお話しします。

最近の自動車は、主要な部品が電子機器で構成されています。そこで「搭載する電子機器同士が影響し合って想定外の動作をしないこと」をあらかじめ確認しておかないと、車に搭載することができません。そこで、

・お客様の製品がノイズを出して他の機器に影響を与えてしまわないか

・お客様の製品が外来ノイズを受けて動作が変わってしまわないか

この2つのチェックをするのがEMC試験です。

「EMC」の言葉の意味は?

EMCという単語は英語の「Electromagnetic Compatibility」の頭文字を取っており、日本語では電磁両立性(でんじりょうりつせい)と訳されます。「Electromagnetic=電磁気の」「Compatibility=適合性、両立性」という英単語で「電磁的に両立するかどうか」という意味で呼ばれています。

EMC試験で知っておきたい基本の2試験

EMC試験にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると2つのカテゴリに分類されます。自製品から発生するノイズの影響を確認する「エミッション試験」と、他製品から発生するノイズに対する耐性を確認する「イミュニティ試験」です。

エミッション試験

まずはお客様の製品からノイズが出ていて、車に搭載されている他の機器に影響を与えてしまったケースを考えてみましょう。お客様の製品から出たノイズの影響で、車のエアコンパネルの温度が勝手に変わってしまうなど意図しない動作が起こる可能性があります。

エアコンの温度が変わるくらいなら大事にはならないかもしれませんが、安全性に関わる重大な箇所に影響する可能性もゼロではありません。最近の車は安全装備の制御も電子化されているので、アクセルやブレーキへなど、車の安全を司る機器に影響が発生しないとも限らないのです。そこで現在は車に搭載される電装品についてはEMC対策が必須とされ、試験の規格も詳細に定められています。

製品から想定以上のノイズが出ていないかどうかを確認するために行うのが、エミッション試験です。

イミュニティ試験

次に、他社が製造した他の製品がノイズを出していた場合のケースを考えてみましょう。たとえ他社製品からノイズが出ていてお客様の製品が影響を受けても、それによって動作が変わらなければ、製品自体は正しい動作を続けられていると考えられます。そこで外からやってくる電磁波に対する耐性を確認するために、試験では徐々にノイズのレベルを上げていき、製品のノイズ耐性を確認します。これがイミュニティ試験です。

説明に何度も出てくる「ノイズ」って何ですか?

先ほどから何度も出てくる「ノイズ」という単語に「?」となった読者もいらっしゃるかもしれません。

ノイズ=電磁波と考えていただくと良いと思います。特に電気・電子機器の動作に伴って発生する電磁波のうち、不要な電磁波を「ノイズ」と呼んでいます。

ノイズにも種類があり、空間を通じて放射される「放射ノイズ」と、配線やケーブルを通じて伝わる「伝導ノイズ」などがあります。一般的なノイズの発生源には、電力線、モーター、通信機器、基板、半導体などがあり、EMC試験の対象となっています。電磁波は目で見えませんので、EMC試験では見えない物を測定して数値化し、評価していることになります。

EMC試験の内容について教えてください

試験の内容は、主に次の2点です。

エミッション試験の内容

エミッション試験では、製品から発生するノイズの値を測定します。測定したノイズの値が設定した値=閾値(しきいち)を超えなければ、他製品に影響を与えないと判断できるため、その数値を測定しています。

なお、空中を伝わるノイズを測定する試験を「放射エミッション試験」、電線やケーブルなどを伝わってくるノイズを測定する試験を「伝導エミッション試験」といいます。

イミュニティ試験の内容

イミュニティ試験では、人工的にノイズを発生させて製品に与えて、動作に変化がないかどうかを確認します。そこで試験では少しずつノイズのレベルを上げていき、動作が変わらないことを確認しています。

なお、空中を伝わるノイズを測定する試験を「放射イミュニティ試験」、電線やケーブルなどを伝わるノイズを測定する試験を「伝導イミュニティ試験」といいます。

そしてこれらの試験は、日常空間にある電磁波の影響を受けない場所で行う必要があります。そのために電磁波の影響を受けない「電波暗室」などの特別な空間を設備しているのが「EMC試験場」「EMC試験サイト」と呼ばれる試験場で、私が所属するデンケン中部センターも愛知県刈谷市にある試験場です。

オンライン予約ができるEMC試験場、デンケン中部センター 
こちらの記事でデンケンEMC試験場の紹介もしております。

EMC試験の流れ

EMC試験は外界の電磁波を遮断できる特別な空間で実施する必要があるため、事前の打合せと設備のご予約が必須となります。試験実施の流れを見ていきましょう。

①お問い合わせ・ご相談

まずはどのような試験を実施されたいかをご相談ください。ご希望の試験内容によって、最適な環境・設備・試験員を検討いたします。

②打合せ・お見積

ご希望の試験内容を実現するのに必要な事項をヒアリングし、試験計画を立ててお見積りします。

③ご発注・ご予約

ご発注いただくと、設備のご予約が完了します。

④EMC試験

試験計画に基づいて、EMC試験を実施いたします。

⑤レポートの提出

試験結果と使用した機器のリスト、試験環境の写真をレポートにまとめて提出いたします。

まとめ

この記事では、愛知県刈谷市のEMC試験サイト「デンケン中部センター」の杉浦さんに、EMC試験について初心者向けにわかりやすく解説していただきました。

EMC試験は、電子機器の安全で安定した動作を保証するために不可欠な試験です。自製品が他の機器に影響を与えないこと、また外部のノイズによって影響されないことを確認することで製品の信頼性を高める大切な試験です。

自動車業界に限らず、さまざまな分野でEMC試験の重要性は高まっています。デンケン中部センターでは、EMC試験の空き状況をオンラインで確認でき、電話予約も可能です。EMC試験が必要になったらぜひご活用ください。

デンケンEMC試験所 試験日程表
https://dkn-emc.jp/top
※2回目以降はオンライン予約も可能です

お問い合わせ・ご予約

電話  : 0566-95-2170

メール : https://emc-dkn.com/contact/

教えてくれた人

デンケン中部センター 杉浦 貴紀   デンケン中部センターで営業担当をしている杉浦です。このブログでは当サイトでの試験情報についてご紹介していきますのでよろしくお願いします。

この記事を書いた人

ものづくりライター 新開 潤子   製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。   https://office-kiitos.biz/
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